本研究室では物質表面の研究を行うため、ほとんどの実験を超高真空環境で行います。大気中では、含まれる酸素や水分により、表面が覆われてしまったり表面が変質してしまうためです。物質の本当の表面を研究するためには、表面に水分や気体が飛んで来ない環境「超高真空」が必要になるのです。
ではどのぐらいの真空度が必要でしょうか?
真空度が Torrの気体に表面が曝されるとき、全ての表面原子に1秒間に平均1回ずつ気体分子が衝突します。1気圧は760 Torrですので大気圧より9桁ぐらい薄い気体です。衝突した分子が必ず表面にくっつくとすると、この真空度では1秒間しかフレッシュな表面を保つことは出来ません。
実験により表面を観察する時間を考えると、最低でも1時間は、表面をフレッシュな状態で保ちたいものです。そうすると Torrの1/3600、すなわち Torrの真空度が必要になることが分かります。このように非常に高い真空のことを超高真空と言います。通常は Torrから Torrの範囲を超高真空と呼びます。
本研究室では通常 Torr 以下の真空環境を作ってその中で表面の研究を行っています。
最近は真空を表すのにもPa(パスカル)という単位を使うことが一般的になりました。換算は以下の式で