雪の結晶で有名な中谷宇吉郎博士が無くなられて50年が過ぎ、この1月1日から博士の著作がパブリックドメインになりました。
すでに青空文庫で博士の著作「雪」を読むことが出来ます。
この「雪」には博士がなぜ雪の結晶の研究をはじめ、どのように研究を進めて行ったのか、その過程が分かりやすく書いてあります(文体は古いのですが)。どのように研究を進めたら良いのか悩んでいる学生の皆さんには良い教科書になると思います。
また、『中谷宇吉郎随筆集』(岩波文庫)に収録されている「科学と文化」は、科学とはどういうもので、科学を研究する者がどのように社会に貢献して行くべきかを説いた短い随筆です。以下に一部を抜粋します。
「科学は決してアルカロイドのようなものではなく、即ち極少量注射したら瀕死(ひんし)の病人が生き返るというようなものではなくて、実際は米かパンのようなもので、毎日喰(た)べていて栄養のとれるものなのである。科学というものは、整理された常識なのである。」
「それは結論をいってしまえば、ある自然現象について如何(いか)なる疑問を起し、如何にしてその疑問を学問的の言葉に翻訳し、それをどういう方法で探究して行ったか、そして現在どういう点までが明(あきら)かになり、どういう点が益々(ますます)不思議となって残っているかということを、筋だけちゃんと説明するのである。」
「特に高遠な議論にしたり、頁(ページ)数を増したりする目的でやたら難しい言葉を使うことはこの場合厳禁である。何といっでも本当に面白い点は事実の羅列にあるのであって、議論にあるのではないということをよく知って置く必要がある。」
そうです。事実の羅列が面白いのです。