CrystFELのインストール

最近、X線自由電子レーザーというものが開発されて各国で使用が開始されています。これにより、非常に短い時間だけ発光する強いX線のレーザーが使えるようになりました。このX線を使用すると、化学反応などの時に非常に短い時間に起こる分子の変形などを、まるで映画を見ているかのようにスローモーションで観測できるようになると期待されています。日本でも兵庫県にSACLAという世界最高性能を持つX線自由電子レーザーが完成し、共用が開始されています。
*X線自由電子レーザー( X-ray Free Electron Laser)はXFELと略します。SACLAの発光時間は約十フェムト秒(100兆分の1秒)で、光でもたった3μmしか進めないぐらいの短い時間です。原子の動きは、ほとんど止まって見えます。

当研究室も、表面構造解析で培った経験を生かすべくSACLAのプロジェクトの一つに参加させていただいております。当研究室の役割は、光照射などによって変化するナノ結晶のX線回折データの解析です。

非常短い時間だけ発光するX線を使ってストロボ写真のような実験を行います。少しずつ時間を変えたストロボ写真を何枚も撮影することで、結晶の変化の動画を得ることができます。ナノ結晶にX線自由電子レーザー(XFEL)を照射して回折パターンを測定するのですが、XFELの強度が強すぎて1回の照射で結晶が破壊されてしまいます。そのため、工夫して実験を行う必要があります。

われわれのやり方は、沢山のナノ結晶を用意してXFELの照射毎に新しいナノ結晶に取り替えて行くというものです。具体的には、液体などに分散させたナノ結晶を連続的に流しながら、XFELを照射しX線回折パターンを測定します。

この方法の問題は、毎回やって来る結晶がてんでバラバラの方向を向いてしまうということです。これでは3次元的な構造の変化は分からず、平均的な情報しかえられません。また、たまたまXFELの当たっている領域にナノ結晶が1個あればデータは取れますが、無ければハズレとなります。複数個あると解析が厄介です。

そこでCrystFELというソフトウエアの登場です。

このソフトウエアは、毎回方向の異なっているナノ結晶から得られた回折パターンの指数付けをほぼ自動的に行うことのできる優れものです。
つまり、ナノ結晶がどの方向を向いているのかを予想してくれるのです。まるで同じ方向にそろった一つの結晶で実験を行っているかのように解析できるのです。

連休中に、時間を見つけてはMacにそのソフトウェアのインストールを行ってきましたが、先ほどやっと終わりました。

以下は、作業の備忘録です。

まずはCrystFELのホームページ

そこにMac OSXへのインストール方法が書いてありますが、以下のような手順です。

MacにApp Storeからプログラム開発用のXcodeをインストールします。このときXcode command line utilitiesも追加インストールします。(AppleのDevelopersにログインしてダウンロードできます。)

Macportsをインストールします。Macportsのホームページへ行って各OSバージョンの.pkg版をダウンロードしてインストールします。以下のようにMacportsをアップデートします。

> sudo port -v selfupdate
> sudo port upgrade outdated

次に以下のようにMacportsを使ってCrystXFELに必要なもの(パッケージ)をインストールします。

> sudo port install pkgconfig gsl fftw-3 pango gdk-pixbuf2 gtk-doc gtk2

 HDF5 ソースをダウンロードして以下のようにconfigureして HDF5ライブラリをコンパイルして、/usr/local/hdf5-threadsafeにインストールします。(HDF5はデータを扱うためのデータ、ライブラリ、ファイルのフォーマットで、CrystFELで使用します。)

> ./configure --prefix=/usr/local/hdf5-threadsafe --enable-threadsafe --with-pthread=/usr

>make
>make install

 CrystFEL ソースをダウンロードして以下のようにconfigureします。そしてLD_RUN_PATH=/usr/local/crystfel/libと設定した後に、CrystFELをコンパイルして、/usr/local/crystfelにインストールします。

> ./configure --prefix=/usr/local/crystfel --with-hdf5=/usr/local/hdf5-threadsafe --with-libtiff=/opt/local --enable-gtk-doc

>set LD_RUN_PATH=/usr/local/crystfel/lib
>make
>make install

最後にCCP4のMac binaryをインストールします。CCP4の環境は以下のようなスクリプトで設定します。スタートアップスクリプトにすると良いようです。

> source /Applications/ccp4-6.2.0/bin/ccp4.setup-sh

以上です。でも、まだインストールしただけです。本当に動くかはこれから確認です。動くと良いのですが、、、

by Tadashi

 

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