新3年生の皆様へ

他の用事にかまけてここの更新が久しぶりになってしまいました。ちゃんと研究教育活動はしておりましたと言い訳させて下さい(笑)

さて、3月もそろそろ終わりに近づき、新しい3年生が研究室に配属される日が近づいて参りました。当研究室は、機械知能系としては異質な研究室と思われているかもしれませんが、そんなことは無いのですよというお話をしたいと思います。

本研究室では、主に固体物質の表面を研究するために新たな観測手法、計測手法を開発しております。固体物質は、いわば材料の一種です。その材料の様々な性質を探ることを目指しています。一昔前までは、固体表面の研究は、大きな単結晶を用意して、宇宙空間並の超高真空中で平坦で均質な表面を用いて行われておりました。いわゆる基礎研究の中の基礎であり、これは、学問としては重要な研究でありますが、なかなか応用へは繋がりにくいという欠点がありました。

そこで本研究室では、実際の不均一な材料の表面を研究できるように、電子顕微鏡法と組み合わせた表面分析法を開発したり、特殊な電子顕微鏡を利用したりしています。例えば、通常の金属は、多結晶と呼ばれて、数10μm程度の小さな結晶粒がランダムに集合したものです。したがって、無数の粒が粒界といわれる境界で隔てられてくっついています。この粒の大きさや、粒界は、材料の強度に大きな影響を与えますので、そのミクロな構造の研究はこれまでに沢山行われてきました。

一方表面はどうでしょう?多結晶金属の表面では、様々な方位を向いた粒の一部や粒界の一部がむき出しになっています。そのような微小表面や粒界は、材料の様々な性質に影響すると考えられますが、小さな領域の影響は、まだほとんど調べられていません。

微小なナノ粒子が重要な役割を果たす典型的なものとしては、排気ガスの無害化に使われる固体触媒があります。この場合は、白金などの小さな金属粒子が働くのですが、粒子全体が働くのでは無く、粒子の表面のごく一部の活性サイトが働いていると考えられています。

また、金属材料を長く使っていると、表面からさびたり、表面から亀裂が入って割れたりします。このような表面から始まる現象を理解するためには、原子レベルで表面を観る手法が必要です。そこから新たな材料が設計できるかもしれません。

現在、材料を引っ張ったり、曲げたり、ねじったりしたときに表面の原子がどのように動いて変形するのかを調べることのできる世界に一つしか無い装置を開発したいと開発を進めています。新しいことにチャレンジしたい元気な学生向けのテーマです。

一方で、観測した大量のデータを解析し、そこから3次元的な表面の原子配列を求めるためには、日々コンピューターに向かい試行錯誤を繰り返す根気と、科学的なセンスが必要です。こちらは、コツコツと忍耐強く進めるのが得意な学生向けテーマです。機械学習やディープラーニングを利用すれば、根気もいらなくなるかもしれませんが、、、。

他にも、皆さんに合ったテーマが沢山有りますので、安心して本研究室を選択下さい。4月に会えるのを楽しみにしております。

by Tadashi

 

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