原子炉で何が起こっているのか、周囲に何が飛んでいるのかを知るために非常に役に立つデータが4/1に日本分析センターから発表されました。
データのpdfはこちらです。日本分析センターにおける空間放射線量率と希ガス濃度調査結果
3/15日前後に放出されてた放射性物質がキセノン(Xe133)であることが示されています。これまで、3/15日前後に各地で観測されていた放射線の鋭い強いピークが何に由来するのかが謎でした。放射能を帯びたガスや雲のような固まりが、短時間で通り過ぎたためと考えられていたのですが、日本分析センターのデータは希ガスであるXe133が広がっていったものである事を示しています。Xe133は希ガスですので、Csやヨウ素のように地面に降下したり沈着せずに、ガスとして拡散して急激に薄まっていったものと思われます。そのために半減期よりも遥かに速く放射線量が減衰したと考えられます。(Xe133の半減期は約5日です。)
Xe133が原子炉で生成されて崩壊していく過程
U235→核分裂→Xe133→β崩壊→Cs133(安定)→中性子捕獲→Cs134→β崩壊→Ba134(安定)
Xe133は、U235の核分裂生成物の一つです。上の核反応過程で核分裂と中性子捕獲は原子炉の中でしか起こりません。各地に飛散したXe133は半減期約5日で安定核種Cs133に変わって行きます。Cs133は天然にも存在する安定核種で放射能はありませんので、拡散したXe133の崩壊はこれで終わりです。Xeは希ガスですので水素と同様に原子炉の建物の中に溜まっていたものが放出されたと考えられます。半減期も短い(約5日)ので原子炉で再び核分裂が起きない限り、今後Xe133が大量に飛んでくる事は無いと考えられます。
Cs133は、原子炉の中では中性子を捕獲して一部Cs134になります。Cs134の半減期は約2年です。日本分析センターのデータではCs134が、これまで報告されていたCs137よりも多く検出されています。これが何を意味するのか専門家からの解説を待ちたいと思います。
様々なデータを総合する事で放射性物質の放出と拡散の様子が分かって来ました。個々のデータがパズルのピースだとすると、それをうまく組み合わせる事で全体像が見えてくるのです。ピースを適当に補ったり、合わないピースを無理矢理組み合わせたりしたのでは正しい結果は得られません。
Xe-133はU起源だけでなく-Iodine -133(約21時間)の崩壊で生まれるXe-133が観測されている可能性はありませんか?
世界中でXe-133が長時間観測されている事実から、原子炉容器内の放出量に比べて大きすぎるように感じます.
市川さま、コメントありがとうございます。だいぶ昔に書いたことなので自分でも良く分かりません。当時の意識としては、Xe-133の急激に上昇したピークは原子炉由来であるということを書きたかったのだと思います。確かにヨウ素133からの崩壊のパスはありますが、申し訳ありませんが専門家ではありませんので由来等はフォローできませんでした。