福島市や飯舘村など原発から北西方向の放射線量が高いのは、風向きや地形のせいであろうと言われておりましたが、それを裏付ける分析結果が福島大学の渡辺明副学長(気象学)によってまとめられました。また、東大の早野先生が全国の研究者と連携して、さらに詳しい拡散シミュレーション結果を報告されました。
福島大学の渡辺明副学長の分析(asahi.comのニュース記事をご覧下さい。)
渡邊先生の解析によると、福島市と飯舘村の大気中の放射線量は15日の夕方に跳ね上がったが、この日の午前6時過ぎに起こった2号機と4号機での爆発と損壊で放出された放射性物質が、当時の南東の風(北西向き)に乗って流された。そして、夕方頃に飯館村、福島を通過したが、丁度その時雨が降っていたため地上に落下したと考えられるそうです。当時の場所ごとの風速、風向、降雨量をもとに解析した結果です。
東京大学の早野先生らによる拡散のシミュレーション(pdfです)
早野先生は全国の研究者と連携してより詳しい拡散のシミュレーション結果を報告しています。それによると15日の午前中に表出された放射性物質は、初めは風に乗って南(関東方面)に拡散し、風向きの変わった午後に北の方向(福島県方面)に拡散して戻って来た様子が示されています。そして夕方頃に原発の北西方向で降った雨により降下したようです。放射性物質が直接北西方向に飛んで行ったのではない事が示されています。北西方向の高い放射線量は、そこでの降雨が重要であったと考えられます。降雨により、大気中の放射性物質が洗われて少なくなる一方で、地表に放射性物質が降りて来ます。この内容に関する早野先生の「公認togetter」へのリンクも示しておきます。
15日に濃い放射性物質がはじめ関東に広がったあとで福島側に戻っている様子が見えます。
※以上の解析は、あくまでシミュレーションですので実際に起こった事を完全に再現しているわけではありませんが、気象条件により放射性物質が複雑に拡散している事が分かります。
政府は原発を中心にして半径20kmの円内を避難圏としていますが、北西方向以外は低い放射線レベルを保っています。これを根拠に20km以内でも場所によっては避難しなくても良いのではという議論もあります。しかし、北西方向のレベルが高いのは、放出された放射性物質が刻々と変わる風向きや降雨によってたまたまその場所付近に多く降下したためと考えられます。どの方向に多く広がるかの予測は非常に難しいと考えられます。そういう意味では同心円状にというのは妥当な判断です。ただし、今後原発から新たな放射性物質の放出が無いと保障できる状態になったら、汚染レベルに応じて細かく避難領域を設定するべきでしょう。