原子力安全委員会の助言を踏まえた原子力災害対策本部の見解を受け,文科省から放射線量の高い地域での「学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方」が4/19付けで通知されています。(コメントの返事にも書きましたが8月末までを目処にした暫定的考え方です。)
これによると、
- ICPRの非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とする。
- 一日8時間屋外活動の生活パターンで年20mSvを越えない場合、すなわち屋外3.8μSv/h以下の学校では平常通りの活動が可能。
- 屋外3.8μSv/h以上の場所では、当面、校庭・園庭での活動を1日あたり1時間程度にするなど、学校内外での屋外活動をなるべく制限する。
というのが主な内容となっています。(年20mSvと屋外3.8μSv/hという基準はICPRの目安の上限値であるので、8月末を目処により低い値に見直す必要があると考えます。)
この通知の中に線量率の計測位置について「保育所、幼稚園、小学校については50cm高さ、中学校については1m高さの数値」という記述があります。測定方法を指定するのは大変重要なことです。加えて測定装置のマニュアルに従って正しい測定を行う事が必要です。
また、学校における生活上の留意事項として
- 校庭・園庭等の屋外での活動後等には,手や顔を洗い,うがいをする。
- 土や砂を口に入れないように注意する(特に乳幼児は,保育所や幼稚園において砂場の利用を控えるなど注意が必要。)。
- 土や砂が口に入った場合には,よくうがいをする。
- 登校・登園時,帰宅時に靴の泥をできるだけ落とす。
- 土ぼこりや砂ぼこりが多いときには窓を閉める。
も添えられています。
4/27追記.関連して保護者の皆様へ (PDF:174KB)と放射能を正しく理解するために (PDF:534KB)という資料が追加されていました。
20mSvという基準について様々な議論がなされています。この基準を示した事で文科省は「20mSvまでなら全くリスクが無い。安全です。」と言っている訳ではないと思います。
学校の授業を受けられない不利益、学習活動できない不利益に比べて、
20mSvを3.8μSv/hを一定の期間浴びる不利益(リスク)の方が小さいという判断だと思います。避難のため自宅で生活できないリスクや教育を受けられないリスクのほうが遥かに大きいという判断だと私は考えています。リスクの大小は個人によっても異なりますし、20mSvのリスクがあるのか無いのかはっきりとしないのですが、このような判断であれば20mSvという基準は妥当なレベルではないかと思います。ただ単にICPRの基準だからという説明では誰も納得できないと思います。
こんにちは。
年間被曝量1-20mSvを、外部被曝と内部被曝を合計した値であるとするICRPに対して、文科省はもっぱら外部被曝として扱っているので、結果的に、福島の子供達の内部被曝量を過小に評価することになるため、保護者の反発が強いようです。
原発事故では、呼吸や飲食物からの内部被曝は外部被曝と同程度かそれより多いようですので、仮に内部被曝が外部被曝と同程度だと控えめに考えるとしても、屋外活動を制限する目安は、3.8μSv/h以上ではなく1.9μSv/h以上と2倍厳しく設定しないと、辻褄が合わなくなるでしょう。
たしか消防隊員の被曝限度が年間10mSvだったと思いますので、今回の文科省の措置は、幼稚園児や小学生に対して、消防隊員の被曝限度の2倍の被曝量を許容することになります。
まあくんさんこんにちは。
言葉足らずでした。おっしゃる通り外部被曝のみを考慮した基準値20mSvには問題があります。ただし、この20mSv(特に3.8μSv/h)というのは8月末までの暫定値ということになっています。それまでに外部被曝、内部被曝を含めた個人線量等のデータを測定して、年間では基準値以下になるような処置をとるものと私は考えています。(そうではないと困ります。)
暫定期間における個人の外部・内部蓄積線量の測定や、汚染地に於いて外部・内部被曝を減らすための方策や生活上のアドバイスの発信等を政府が進める事が必要です。住民の方も、どうやったら自分の被曝量を知ることが出来るか?どうやったら自分の被曝を減らせるか?という情報を強く関係機関に求めて下さい。
内部被曝は殆どが食料や飲料から起こります。汚染されていない食材や飲料を汚染地に送る事も重要です。
追加です。ICPRの非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年は、1mSv/年を目標に対策をとることが前提のようです。あくまで暫定値で、汚染低減が求められています。詳しくは、team nakagawaのブログ記事とそのソースであるICPR Publ.111暫定翻訳版を見て下さい。
加えて菊池誠さんのブログの記事やコメントも参考になります。
文科省の「放射能を正しく理解するために」という資料が改訂されました。(平成23年6月24日改訂)