追記:放射線は距離の2乗に反比例する?

一様に降り積もった放射性物質からの放射線量は、”理論的”には、地面からの距離(高さ)によらない事を以前の投稿で述べましたが、検出器の大きさや指向性、空気による減衰、地面による遮蔽効果の考察が欠けておりましたので追記いたします。

検出器の大きさの影響

検出器の大きさ(検出窓の大きさ)に比べて、検出器と地面との距離が充分大きいときは値は距離によりませんが(空気による減衰が無視できる場合)、地面との距離が検出器の大きさ程度になると、距離によって値が変わって来ます。距離が小さくなっても検出器が捉える範囲が距離の2乗に比例して減らなくなるためであり、そのため値は高くなります。どの程度近づけるとどれだけ高くなるかは検出器の大きさ等によって変わります。検出器のマニュアル等で確認できるのではないかと思います。密着させて測定した場合は、空間線量率ではなく、表面線量率(μSv/h)や表面放射能密度(Bq/m^2)が求まります。人間の身体を検出器と考えて、大人と子供をサイズの違う検出器とすると地面からの放射線量は大人でも子供でもそれほど変わらないと思われます。足の裏は他よりちょっと高い線量を浴びることになります。

検出器の指向性の影響

一般にGM管などの線量計は一方向に薄い窓が設けられており指向性があります。したがって検出窓を地面の方向に向けたのと空に向けたのでは、だいぶすこし値が変わるはずです。地面を測るときは下向きに、空間線量を測るときは水平向きにすることが多いのではと想像しますが、この場合は地面に向けた場合は数倍いくらか高い値が得られると思われます。検出器の指向性もマニュアルで確認できるでしょう。空間線量を測る場合は、その場所で最も高い値が出る方向の値をとるべきでしょう。検出器と違って人間の身体には指向性がありませんので。

追記(5/19):緊急被曝医療研修のホームページによるとγ線検出器の指向性は、確かにありますがそれほど強くはないようです。

空気による減衰の影響(β線の影響)

ヨウ素131やCs137はβ線を放出してから、さらにγ線を放出します。これらのβ線や、γ線は空気中を進むうちに空気の分子等に吸収されて減っていきます。γ線は殆ど吸収されず、半減するまでの距離は大雑把に言うと100mほどになります。したがってγ線に関しては地上50cmでも1.5mでも殆ど変わりません。β線は空気中でも数メートルで半減するので、地上からの高さによって大分変わります。やはり低いところは危険なようです。(β線は厚さ1cmのプラスチックで充分遮蔽できます。普通の靴底で遮蔽できます。汚染地域では裸足で外遊びはしないほうが良いでしょう。)

追記(5/25):通常のサーベイメーターでμSv/hを測定するときは、β線が検出されないようにしてγ線のみを検出するようにする必要があります。β線が混じると真の値よりも大分高い値が表示されます。記事「ガイガーカウンターの使い方」を参照ください。

地面による遮蔽効果(4/27追記)

原子力安全委員会が公開している原子力施設等の防災対策について(PDF:2.49 MB)の94ページにγ線による被曝の低減係数という表があり、理想的な平滑表面の場合、高さ1mでの低減指数1.00(つまり低減無し)、通常の土地の条件で地面から1mでは0.7となっています。理想的な平面では、何百メートルも離れた場所からの放射線も遮られる事無く届くのですが、通常の地面はでこぼこしているために、遠くから地面すれすれを通ってくる放射線がそのでこぼこで遮られてしまうためのようです。1mと1cmで1.3倍程度の差が出るのはこの地面のでこぼこの効果が大きいようです。畑の土、グラウンドの土、アスファルト、コンクリートでも値は異なって来ると思われます。

追記:追記ばかりで申し訳ありません。福島県立安積黎明高等学校から放射線量に関するレポートが公開されています。校内の様々な場所での放射線量や、高さ依存性が詳細に報告されており、非常に役に立つデータがまとめられています。

「追記:放射線は距離の2乗に反比例する?」への5件のフィードバック

  1. 追記でつぎはぎだらけになってしまいましたが、地面からの距離による線量値の違いは地面のでこぼこで遮蔽されたり、地中にしみ込んだ成分が地面の土によって遮蔽されたりすることが、主な原因のようです。自分でもようやく納得できる答えが見つかってホッとしています。(どうでも良い事かもしれませんが、、、)

  2. γ線検出器の指向性はあまり強くないようです。ただし、β線の検出器は強い指向性を持ちます。GMサーベイメーターのようにそのままではβ線を検出してしまう物に関しては注意が必要です。μSv/hの単位で測定するときは、きちんとβ線をシールドするキャップを装着してγ線のみを検出する状態にしなければなりません。GMサーベイメーターでの正しい測り方は、ガイガーカウンターの使い方にあるリンクを参考ください。

  3. 地上付近ではβ線を検出してしまうため、GMサーベーメーターが誤った高い値を表示するというのが、これまで地表付近で高い線量値(μSv/h)が報告されている要因のようです。詳しくは記事「ガイガーカウンターの使い方」や、そこにあるリンク「ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について」をご覧下さい。

  4. 線量計大手のALOKAさんから、GMサーベイメーターの指向性についての注意pdf

    窓じゃない方向の方が感度が高い!!γ線は透過しやすいのでセンサー(GM管)の形状による指向性が出ているものと思われます。

    以下、pdfより引用
    「サーベイメータは、使用しているセンサーによってそれぞれ放射線に対する方向特性やエネルギー特 性が異なります。これらの特性は、カタログや取扱説明書に記載しておりますので、測定対象に応じて 測定結果を評価していただけますようお願いいたします。」

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